私たちは夫婦は、
十年の結婚生活に終わりを告げ。
その一か月後には翼と百合は再婚した。
周りの人達や親族から白い目で見られていた。
集落の人達や学校や職場では
面白半分で家族構成を聞きまくる輩もいた。
子供達はそんな生活をしてたのにも関わらず、
そんなことを感じさせないようにと
私達には笑顔を振りまいていた。
そのことを後から
聞かされた時は
自分の不甲斐無さを感じずにいられなかった。
この頃の私は自分のことで精一杯で
子供達がどんな思いで日々を
送っていたのか分からなかった。
母方の祖父母や親戚と花蓮は、
私が百合を言いくるめて洗脳していると
本気で思っていると知らされた時。
目には見えない心の傷は、
化のうしたまま益々深くなり、
血が爛れ落ちる。
会話さえろくにしたことがないのに、
何故こんなことしか思えないのか。
私には理解が出来ず、
当初は怒りに身を任せたこともあった。
それよりも、
お互いに分かり合えないことが悲しかった。
その日を境に、
母方の親族とは更に距離を置くようになる。
私と花蓮が一緒に生活をしている途中。
心の中で
『姉だから、母だから、孫だからと頼られるのはもう嫌だ!誰も知らない土地に行きたい!』
もう一人の自分が叫んていた。
沖縄に居たくなかった。
私の事を誰も知らない、
場所さえ分からない所にこの身を起きたかった。
そして、
季節労働の長野に行くことになる。
長野は、自然の中に龍達は優雅に泳いでいる。
傷ついた私の心を癒すのに最適な環境だった。
誰も知らない土地での生活。
家と仕事の行き来をする毎日を送っている中、
夜勤明けの帰宅途中。
いつものように空を見上げると、
いつもは穏やかな顔をした龍達が何かに怯え。
異常にグルグルを空を駆け回っている。
『何かがおかしい・・・』
見えない何かがあることは分かっていても
予測もつかない。
只々物凄く嫌な出来事が起こる恐怖に足が竦み、
何とか家路へたどり着くが、
布団を身に纏いブルブルと震え眠ることが
出来なかった。
その日の夜勤労働の真夜中に異変は起きた。
皆は慌てふためく中、
私は呆然と真っすぐに立ち尽くし、
泣き叫ぶ人たちの声を聞いていた。
龍達が怖がって逃げ回っていたのはこのことか・・・
『多くの死者がでるよ』
知らせていたのかもしれない。
知っていてもどうすることも出来ない
自分のもどかしさと苛立ちを隠せずにいた。
地震は止まることを知らずに収まる素振りも
見せない。
仕事場も封鎖されて、
一人家で怯えて過ごす日々を送る中、
あずみねぇねぇや百合と花蓮から電話があったが
「お金を貯めて沖縄に帰ってくる」
と言ったもの本当は自分の居場所がない所に
帰りたくなかった。
この時の私は、
皆に意地を張っていたのかもしれない。
それから間もなく
意外な人物から電話がかかってきた。
母方の祖母だった。
電話口から聞こえてくる祖母の声は
いつもの怒鳴り声ではなく、か細かった。
この時、
祖母の身体は癌に侵され余命が宣告されていた。
「これ以上心配をかけないでくれ。
晶子や善輝を失ったのに、
心までいなくなるのを見たくないんだ・・・・
早く沖縄に帰ってきなさい・・・・」
祖母の声を聞いて涙が止まらず。
「おばぁ・・・・ごめん・・・・
心配ばかりさせてしまって、本当にごめん・・・・」
そんな返事しかできなかった。
貯金もゼロの私は、
母方の叔母と花蓮と百合達からお金を借りて、
上司に事情を話し仕事を辞め長野を後にし
沖縄へと帰っていった。